ポートフォリオ

G-TEC代表 清水 智一

■経歴概要

日本企業、外資系企業において耐久消費財(釣り用品)の開発を20年以上携わり、日本企業においては、新ブランド事業部の責任者として、経営方針に沿った事業計画を一から作成、マーケティングからセールスまで一貫したコンセプトで開発、売上の管理を実施、会社の立て直しを図る。
外資競合企業に転職後は、プロダクトマネージメント本部に所属。商品開発企画から販売計画、予算管理、PR,広告宣伝計画立案、費用対効果検証も経営視点で分析、戦略決定を牽引。釣竿開発責任者として経営戦略策定に深く関わり、ブルーオーシャン戦略を軸とした市場の創造を積極的に行い、マーケットのリーダーシップを確立し、シェア拡大を図る。製品開発、価格、納期調整、そして代理店、販売店と協力体制による売上アップを実現。アングラー「トモ清水」としても、TV、YouTube、雑誌等のメディアにも露出を図りながら新規開拓と「釣りの楽しさを後世に伝えていく」という目標に社会貢献を目指す。

■履歴

石川県金沢市出身
1977年生まれ
国立大学工学部卒業
2000年3月
マミヤ・オーピー株式会社
2000年4月~2002年3月
オリムピック株式会社
2002年4月 ~ 2009年9月
ピュア・フィッシング・ジャパン株式会社
2009年11月 ~ 2022年4月
新ロッドブランド G-TEC 立ち上げ
2023年2月 ~

■経験・知識・技術

・ロッド(釣竿)設計開発スキル/製造技術スキル/生産管理スキル/プレゼンテーションスキル/市場分析/ブランド管理および再生/広告代理店調整コントロール/CAD設計スキル/海外調整コントロール

・PCスキル  Word/・Excel/・PowerPoint/・Illustrator /・Photoshop/・AutoCAD 

・普通自動車運転免許 ・小型船舶操縦免許

・英語:ビジネス利用(US、中国ベンダーとの調整・報告等、リモート会議、メール等)

■自己紹介

趣味:スキー、スノボー、サーフィン、キャンプなどアウトドアを中心としながら、やはり一番の趣味は「釣り」という遊びで常に本気。その他、読書、映画鑑賞、温泉大好き。

血縁関係:文化勲章受賞の画家「中川一政」と清水家は親戚関係

志:高校の時に「釣り」という趣味を仕事とし、社会に貢献していくことを胸に誓い、その一貫した意志と持ち続ける夢は今もなお継続中。生涯「釣り」に人生を捧げる。

■経歴詳細

時代に合ったユーザーニーズを常に分析し、適切な商品計画と予算配分を実行、過去の成功、失敗事例に拘らず、常に一歩先を見越した企画を提案。定性的な公知の市場データに加えて販売店、消費者のヒアリング等社外の情報も取り込んだ上での市場動向を予測しながら事業計画を作成。デマンドの創造を目指す。

2000年マミヤ・オーピー釣り事業部撤退、2005年外来生物法が施行、2011年東日本大震災、2020年新型コロナウイルス感染症拡大と度々訪れる危機、逆風下において力を発揮。レジリエンスの強さが最大の持ち味。

・日本釣具大手メーカーでは、ロッドの設計を基礎から学ぶ。ロッド設計から裁断、巻き付け、焼成、脱芯、センタレス加工、塗装、印刷、ガイド糸巻き、組立、全ての工程をマスター。

ルアーロッド、鮎竿、渓流竿、へら竿、筏竿、ゴルフシャフトなどの設計経験を積む。
メインはルアーロッドの設計を得意とし、常にグラファイトテクノロジーの進化を模索し研究。

新ロッドブランドを立ち上げ、新ブランド責任者としてV字回復を実現。厳しかった経営状況を好転し基礎を構築。
数々のロッドのタックルオブザイヤーを獲得。
自社ブランド以外にも日本のOEMビジネス管理、開発。7社にも及ぶメジャーなロッドの開発に携わる。
東レとの共同研究を実施し、新製法のロッド開発に成功。特許出願。

・外資系釣具大手メーカーでは、日本独自のロッドを次々と新ブランドを立ち上げ、幅広い世代に広く支持され、フレッシュ、ソルトウォーターのロッドビジネスを急成長させる。2011年、震災による売上ダウンをも経験しながらも翌年にはV字回復を実現。新しいロッド開発をベースにロッド売り上げを継続した成長を実行。2021年には過去最高の売上を実現。
自社ブランド以外にも日本のOEMビジネス管理、開発。大手ルアーブランド3社のロッド開発、責任者を務める。

・グローバルな展開として自ら開発した製品が、国内市場のみならずアメリカ、オーストラリア、韓国、マレーシア、タイなど、世界各地での売り上げアップに貢献。日本の釣り文化を海外へ伝える大きな成果を上げる。 

◆2018年には、自身の製品がオーストラリアでのフィッシングショーでベストオブタックル賞を受賞。
◆韓国ロッドには、技術、企画の提供、情報シェアを実施。韓国の新しい釣りブームに大きく貢献。 

・2023年独立。ロッドの新ブランド「G-TEC」を立ち上げ。今までの経験を活かし、さらなる進化を続け新しい価値の創出を目指す。

■ロッド開発という仕事について

ロッド開発という仕事に携わって約20年、ロッド開発がどういう仕事なのか、どうやったらその仕事に就けるのか、など開発者視点しか見えない、知られざる事実を少しでもお伝えしていければと思います。

DMである大学院生から将来、釣りの仕事に携わりたく、実際に釣りメーカーがどういうものなのか、実態に関するご質問、お電話を頂いたり、ロッドに関わるご質問を度々頂いております。 

趣味を仕事にすることの賛否も色々あると思いますが、釣り人にとっては誰しもが、自分が好きなことを仕事として「趣味と実益を兼ねる」という、自分の好きなことをしてお金を稼ぐことに一度は憧れたり、夢見たことがあるのではないでしょうか。

また仕事としてではなく、個人でリールやロッドをカスタムする方も多いかと思います。でも実際はカスタムやロッドビルディングみたいな個人的なものと、仕事として、プロとして、それを生業としているのは全く別物ということになります。

では実際に項目ごとに詳細を説明していきます。

◆ロッドビルダーとロッド設計開発者との違い

世の中にはロッドビルダーと呼ばれる、名のごとくロッドを自分で作っている方は多くいます。しかしその実態は、ロッドのブランクス(素管)を外部から手に入れて、ガイド部品やグリップ部品も調達し、それらをアッセンブリ(組み立て)して完成させるケースがほとんど。グリップ素材のEVAやコルクなど、自分の好きな形状に削ってカスタムしたり、ガイドのサイズや数を自分なりに選び、カスタムし、好きな色で塗装することは、簡単で誰もがチャレンジ出来ます。しかしブランクスに関しては、自分でパターン設計し、巻いて焼成し作ることはほぼ不可能で、完成した出来合いのものを入手するほかありません。

よってロッドビルダーとロッド設計者もしくは開発者の決定的な違いは、ロッドの心臓部であるブランクスを自ら作れるかどうか否か、といった点になります。 

またロッド開発のプロかアマチュアか、という点で見た場合も、マンドレル設計、パターン設計、テーパー設計、部品設計などの設計における実務経験があるかどうかで判断出来ます。
ロッド(釣竿の性能、うんちく)について、あたかも知ったかのように上手く饒舌に語っている方も居ますが、これはトークや文章が上手いだけであって、開発のプロから見ればアマチュアの領域を超えません。 

ロッド設計、開発者はロッドビルダーとも言えますが、何万通りというパターン設計まで出来るか、出来ないかが、一つの境界線となるわけです。実際に設計まで出来るロッド開発者は国内では非常に限られている特殊な仕事とも言えます。

G-TECは、システム化されたコンピューターによって緻密な計算を行い、常に最適解になるようブランクスの設計をしています。

◆ロッドの仕事に携わるには

ロッドの仕事に携わる一番の近道は、ロッドを販売している釣り具メーカーに務めるということ。これは分かり易いですよね。でも実際にはロッドに関わる仕事は、以下のように細かく分けられます。

・企画、立案する仕事(開発、マーケティング)
・ロッドのブランクス(素管)を設計する仕事(開発)
・ロッドのデザインをする仕事(デザイナー)
・ロッドの部品(カーボン、ガイドなど)を調達する仕事(サプライチェーン)
・ロッドを製造する仕事(工場、生産管理)
・ロッドを検査する仕事(工場、品質保証)
・ロッドのフィールドテストしフィードバックする仕事(開発者、テスター)
・ロッドをプロモーションし、販売に繋げていく仕事(マーケティング、テスター、営業)

実際にはもっと細かいのですが、大まかに分けてこのような仕事になります。
ロッドの仕事に携わるには、まずどの仕事に携わりたいのか、というのを考えておくと良いでしょう。 

またロッドの開発者には、鮎竿専門の設計者、ルアー竿専門の設計者など、鮎、磯、へら、ルアー、フライ、渓流などジャンル毎に専門の設計者がいるケースもあります。これは大手総合釣り具メーカーにある傾向。
また大手企業になればなるほど、企画、開発、デザイン、製造、販売、営業と上記の仕事が明確に区別され、部署が分かれています。

ちなみにわたくしG-TEC代表、兼開発者の清水の場合、全ての業務に携わった経験があり、0(ゼロ)から企画し、開発、設計、プロモーションまで一貫したブレのないロッド開発が強み。またルアーロッドだけでなく、鮎竿や渓流、船竿など、あらゆるジャンルのロッド設計も経験ありますので、たとえば鮎竿の最先端技術をルアーロッドに応用する、といったことも可能になります。

開発者清水のケースのように一貫したロッド開発は、縦割りの仕事でそれだけ、限られた仕事をこなす、というよりは、やらなければならない業務も多く、非常に大変ですが、一番やりがいがあると言ってもよいでしょう。

◆釣竿の製造方法

グラスファイバーやカーボンの釣り竿はどのように作られているのでしょうか。簡潔に説明していきます。

カーボン竿(カーボンロッド)は、素材の段階では、「プリプレグ」という接着剤(レジン)を貼った紙に炭素繊維の糸を引き揃えてシート状にしたものになっています。この接着剤は熱硬化性(熱をかけると固まる)のため、シートは冷蔵庫(冷凍保存も)で保管されます。プリプレグを釣竿にするには、シートから紙をはがしてマンドレルと呼ばれる芯金に巻き付け、釜に入れて熱をかけると中の接着剤が硬化します。そこで釜から出して芯金を抜くと(脱芯)、釣り竿の元である素管(ブランクス)ができるという仕組みです。

◆釣竿の心臓部

釣竿といえば現在カーボン素材で作られているのが一般的ですが、竹材から始まり、グラス素材、カーボン素材と進化してきました。グラス素材からカーボン素材に切り替わった時の釣竿の進化は大きく、カーボン繊維ならではの軽さと強度を手にしました。

それが1972年、オリムピック釣具社から世界初のカーボン竿「世紀あゆ」が発売。
これまでの概念を大きく覆す出来事に。 

このように釣竿はブランクス(素管)と呼ばれる部分によって大きく性能、特性が変わり、釣竿の心臓部と呼べる重要な部分になります。

その釣竿の心臓部「ブランクス」は、やがて高弾性のグラファイト開発により、より軽く強く進化していったのはご存知でしょう。

鮎竿やへら竿は、ガイドという部品が一切ないので、ブランクスだけで、その釣竿の調子、軽さ、強度が決まってきます。一方、ルアーロッドは、ガイド部品、グリップ部が加わってくるので、それらのセッティング、材質によっても釣竿の性能が影響されてきます。ルアー竿もブランクスでその竿の性能がほぼ決まるのですが、ガイドセッティングやグリップ部によっては、そのブランクス性能を引き出せないというケースも出てきます。

ガイドあるなしにしても、テスト等でそのバランスや長さをチェック、調整していく必要があります。

 

◆ロッドOEMとは

OEMという言葉はよく耳にするかと思います。釣り業界にもOEM形態は多く存在します。ロッドメーカーは数あれど、自社窯を持っている国内メーカーは非常に限られています。よって自社窯を持っていないほとんどのメーカーは、OEM(Original Equipment Manufacturing)という形を取っています。OEMメーカーが他社ブランドの製品を生産します。もしくは海外に生産拠点をおくか、中国をはじめとする海外のロッド工場に生産をお願いする、という形をとります。

代表清水もロッド開発者、設計者という立場から、この20年間、実に20社近いOEMのロッド開発に従事させて頂きました。ここまで幅広く他社ブランドのロッド開発まで手掛ける他のロッド開発者は私の知る限り居ません。時にはODMといった業務提携も。おそらくこれを読んでくださっている方がすでに使っているロッドも、何かしら私が開発に関わっている可能性が高いかもしれませんね。

ロッド開発者は、各社の担当の方だけでなく、トップバスプロアングラー、各テスター、鮎の友釣りスペシャリスト、へら釣りを極めたへら釣り堀のオーナー、全国各地の敏腕船長など、各釣りを極めた釣り人と仕事するケースを非常に多く、彼らと打合せ、フィールドテストなどを通じて、決して一人で釣りをしていては得られない、情報、経験、考え方を多く学ぶことが可能。釣りは知れば知るほど、自分が無知であることを痛感させられます。常に勉強です。

◆日本のものづくり

日本の釣り具メーカーの「ものづくり」は世界トップクラス。

カーボン繊維の品質、性能は、東レファイバーはやはり世界一トップクラスを誇ります。私が最先端ロッド製造技術で設計する素材の選択は、東レ社の最先端素材が必要不可欠となってきます。この日本の技術力があってこそ、さらなる進化が望めます。

そのためG-TECの核とも言える「MAGNUS製法」は100%国産のカーボンに拘っています。

◆この先、さらなるロッドの進化はあるのか

結論から先に言いますと、これから先まだまだロッドの進化の余地は残されています。

G-TECは東レ社と共同研究を15年ぶりに行っているのですが、その中で色々お話しさせていただき、久しぶりにワクワク出来る、かなりディープな話題で盛り上がりました。

「こういう話しが出来るのも清水さんしか居ないんですよね〜」

こういう話というのは、東レさんの最先端素材を、どう釣竿として応用し進化させるか、という純粋に技術的な内容。そこには一切、コストやマーケティング、経営的な話は入らない。
純粋に技術的な話が出来る、ということで東レさんの担当の方も「清水さんしか居ないんですよね~」と仰るのだと思います。

まだまだブランクス技術は進化出来るのだと、考えさせられた内容でした。

一般的な経営者、開発者の立場で考えると、どうしてもコストという壁が立ちはだかります。このコストを考慮した場合、販売価格との兼ね合いや、コストやマーケティング、経営的な要素が入るので、純粋にロッド技術だけにフォーカスしにくく、進化の妨げ、要因となってしまいがち。進化にはやはりコスト増が付き物で、膨大な開発費、研究費、それに伴い材料の高騰が発生し、非常に高額な釣竿になってきます。 

要するに、コストが高いため高性能な進化したロッド技術をあきらめるしかない、ということ。

諦めた結果、技術が20年前から止まっているロッドメーカーを数多く知っています。残念ながらイノベーションを起こせないロッドメーカーは廃業、規模縮小の道を辿っていくのを実際にこの目で見てきました。

釣り人がどこまで釣竿の性能を求めるのか、これもまた時代によってニーズは変化するものなので難しいところ。たしかにコストを掛ければ、より進化したブランクスを手に入れられるのだが...

ただ、いち開発者としては、やはりロッドの進化には、コストを度外視しても興味が尽きないものなのです。

◆TORAYCA®(東レのトレカ)の変遷

高強度糸

T300(1970年代~):第1世代

T700S(1980年代~):第2世代

T800S(1990年代~):第2世代

T1000G(1980年代~):第2世代

T1100G(2010年代~現在):第3世代

高弾性率糸

M40(1970年代~):第1世代

M40J(1980年代~):第2世代

M40X(2010年代~現在):第3世代

 

やはりカーボン繊維も糸から進化し続けていることがお分かりになると思います。
時代は第3世代に突入しています。
共同研究によって第4世代が将来生まれるのか、これは私自身もいち設計者として非常に興味があるところです。

◆主役は皆さん、釣り人であるべき

以前、東レさんの協力と頼もしいバックアップがあって、何万通りというパターン設計から、最適解を自分で導き出せた経験は大きい。仮説を立てては、仮設計しプリプレグを裁断しては巻いて、測定し、折っては強度データを取る。この作業をいったいどれだけ繰り返しただろうか。 

その甲斐あってカーボンブランクスの設計パターン、最適解は頭に完全に入っている、それがG-TECロッド開発者の強み。

また何十年という先人達が築き上げたロッド設計の基礎も、自分のベースとなり、そこから応用する事でさらなる高みを目指せられます。

ロッド開発、設計は、皆さんが知っているより、より深く、より面白い。

そしてまだ進化の余地が残されています。

さらに最先端素材を採用し、製造技術的にも進化させたブランクスの製法を考え、現在テストしています。

えんぴつ1本、紙に書いていく作業はとても重要。
仮説を立て、多角的に設計、開発し、現場でテストしていく。

 

現場主義
実績重視

シャンとしているけども、キャスト時、ファイト時は、しっかり曲がり、ムチのようにしなる。魚の強烈なファイトに対し、タメているだけで魚を寄せる、浮かす力があるブランクス。

高弾性に頼らない軽量化、高感度化。そしてさらなる飛距離が出るブランクス。

そして、もっと釣りが楽しくなるロッド。

一匹でも夢みられるロッド

たとえ魚が釣れなくとも夢みられるロッド

◆さらなる理想の釣竿を

ロッドが進化することで、より釣りが楽しくゲーム性が増すことをより多くの方に知って頂きたい、体感して頂きたい、その強い想い。

ロッドにしてもリールにしてもプロダクトに注目されがち。

それでも道具は道具。
主役は皆さん、釣り人なのです。

釣り道具は釣り人をサポートし、相棒であるべき存在だと思うのです。
主役である皆さまがキラキラと人生が輝ける、そんなお手伝いが出来ればと。

 

G-TEC代表 清水智一